皆さん, こんにちは. 管理人です. 今回は, ユークリッド整域と単項イデアル整域の定義を述べ, ユークリッド整域ならば単項イデアル整域であることを証明したいと思います. なお, 可換環や整域, イデアルなどの言葉はすでに知っているものとして話を進めます. また, この記事においては, 自然数の集合 \(\mathbb{N}\) は \(0\) を含まないものとします.
定義:ユークリッド整域と単項イデアル整域
定義(ユークリッド整域):\(R\) を整域とする. 写像 \(\phi: R \setminus \{0\} \rightarrow \mathbb{N} \) を考える. \((R, \phi)\) が次の条件を満たすとき, \(R\) は \(\phi\) を備えたユークリッド整域であるといい, \(\phi\) をユークリッド関数という.
条件:\(\forall a \in R \setminus \{0\}, \forall b \in R\) に対して, \(q, r \in R\) が一意的に存在して次を満たす:
\[
b = aq + r \ \ かつ \ \ ( \ r = 0 \ \ または \ \ \phi(r) < \phi(a) \ )
\]
定義(単項イデアル):\(R\) を可換環とする。\(R\) のイデアル \(I\) が \(R\) のただ一つの元で生成されるとき, すなわち \(\exists a \in R: I = \{ar | r \in R\}\) となるとき, \(I\) は \(R\) の単項イデアルであるという. なお, このとき, \(I = (a)\) と書いたりする.
定義(単項イデアル整域):\(R\) を整域とする. \(R\) の任意のイデアルが単項イデアルであるとき, \(R\) を単項イデアル整域という.
定理:ユークリッド整域ならば単項イデアル整域である
定理:\(R\) を整域とする. このとき, \(R\) がユークリッド関数 \(\phi: R \setminus \{0\} \rightarrow \mathbb{N}\) を備えたユークリッド整域ならば, \(R\) は単項イデアル整域である.
証明
\(R\) をユークリッド関数 \(\phi: R \setminus \{0\} \rightarrow \mathbb{N}\) を備えたユークリッド整域とする. \(I\) を \(R\) の任意のイデアルとする. このとき, \(0 \in I\) である. 実際, \(I\) はイデアルなので, \(\exists x \in I\) であり, \(0 = 0x \in I\) が成り立つ. 以下, 場合分けする.
(i) \(I = \{0\}\) のとき:
\(I = (0)\) より \(I\) は単項イデアルである.
(ii) \(I \neq \{0\}\) のとき:
\(0\) ではない \(I\) の元が存在する. 集合 \(\{\phi(y) | y \in I \setminus \{0\}\} \subset \mathbb{N}\) は空集合ではないので, 最小値 \(\min \{\phi(y) | y \in I \setminus \{0\}\}\) が存在する. したがって, \(\exists m \in I \setminus \{0\}: \phi(m) = \min \{\phi(y) | y \in I \setminus \{0\}\}\) が成り立つ. 任意の \(a \in I\) をとる. \(R\) はユークリッド整域なので, \(q, r \in R\) が一意的に存在して,
\[
a = mq + r \ \ かつ \ \ ( \ r = 0 \ \ または \ \ \phi(r) < \phi(m) \ )
\] が成り立つ. よって, \(r = a-mq \in I\) である. ここで仮に \(r \neq 0\) であると仮定すると, \(\phi(r) < \phi(m)\) となるが, これは \(\phi(m)\) の最小性に反する. したがって \(r = 0\) であり, \(a = mq \in (m)\) が成り立つ. ゆえに, \(I \subset (m)\) である. なお, \((m) = \{mr | r \in R\} \subset I\) である. したがって, \(I = (m)\) である. ゆえに, \(I\) は単項イデアルである.
以上, (i), (ii) により, \(I\) は \(R\) の単項イデアルである. したがって, \(R\) は単項イデアル整域であるということが示された.
参考
「ユークリッド整域」ならば「単項イデアル整域」の証明(tsujimotterのノートブック):
https://tsujimotter.hatenablog.com/entry/ED-implies-PID
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